ロック/メタル系 WEBマガジン
TOP | ARTIST | COLUMN | INTERVIEW | NEWS
TOP | ARTIST | COLUMN | INTERVIEW | NEWS

|| COLUMN ||

【第9回】音楽に必要なもの。

今日、「きやへん倶楽部」の放送後にとある若者から「ギターを持たずに出来る練習法はないか?」と尋ねられた。
漠然と聞かれたのだが、練習法ってのはその先に目的なり目標が存在するのが普通である。
なので、目的も無しに特定の練習法を尋ねられても正直、答えようがない。
彼は「コードも良くわからないですし、ディミニッシュとかどう使えばいいかわからない…、後リズムとか〜、カッコイフレーズとか〜、そういうのを弾くためにはどんな練習をしたら良いのか知りたいんです。」という訳だ。
  
う〜ん、結局漠然としたままなのだが、まぁ漠然としながらもスキルアップしたいんだって意欲があることは判った。
なので、オレはこう答えた。
 
「ギターを使わない方法ね…そうだね、『良く遊ぶ』 かな?」
 
と答えた。w
当然彼はキョトンとしたが、更にこう付け加えた。
 
「ディミニッシュコードの抑え方は3分あれば覚えると思うけど、そのディミニッシュコードを使えるかい?」
 
彼は黙っていたが、オレは続けた。
 
「ディミニッシュの抑え方を知っても、自分の中でそのディミニッシュが響いてないと使えないよ?それはディミニッシュじゃなくても同じだ。 普通のセブンスコードだってその音が自分の中で響いてないと出てこないだろ? だからディミニッシュを響かせるために、それが響いてる自分自身を作る作業をした方が良いんじゃないか? 其のための感受性を育てるために、色んな事を知り体験して想い、感情を震わせるような出来事により多く直面することが大切なんじゃないかな? そうすることで、ある日自分の中になにか新しい響きが生まれたとき、それがディミニッシュだったならば、其の時に押さえ方を覚えても遅くないだろ?」
ってね。
 
この辺の問題は、ソコソコ弾けるようになった人が共通してぶつかる壁みたいなもんだ。
余程の天才とかじゃない限り、殆どの人はこの壁にぶつかるだろう。
もし、30歳を超えてて「そんな事思ったこともないよ。」って人は天才かもしれない。
 
ある程度弾けるように成ると、更なるスキルアップのために、演奏の技術面ばかりをクロースアップしてしまう傾向にある。
つまり、「もっとこう弾ければ自分はもっと凄いプレーヤーになれるのに!」と思ってしまうわけだ。
確かにそうなのだが、ソレだけだとダメなんだ。
 
音楽は自分の心が奏でるものであって、技術が奏でるものじゃない。
またミュージシャンならば、心が奏でた音と、技術が奏でた音を聞き分ける耳を養ったほうが良い。
コレは理屈を通り越して、心が奏でた音の方が人の心を動かすからだ。
だからこそ、技術が付けば付くほど、心の問題が大きくなって、そこに優劣の差が出て来る。
 
ある程度弾ける、バンドなどで既に活動しているような、つまり初心者では無いならば、実は一度メンタル面を見直す時期なんじゃないかと思う訳だ。
自分は何のために、誰のためにプレイするのか?
その目的はなんなのか?
其のためにはどんな目標を立てるべきなのか?
とかね。
 
そういう部分を具体的に出来ないと、ただ漠然と練習時間だけが過ぎ去り、肝心な物は何も身につかないなんて結果に終わることも少なくない。
オレは更に続けた。
 
「例えば、難しい言葉を知ってても、その言葉の意味が理解できてないと、会話の中で使えないよね?それに似てるよね。難しいコードの押さえ方を知ってても、その響きを知らないと自分の曲の中にそのコードは絶対に出てこないよね。」
 
彼はやはり黙っている。
オレは続けた。
 
「仮に知識として知っているコードを羅列することが出来ても、その響きを知らないと、そのコードの羅列が良いものには聞こえないと思うよ。だって、響きを知らないって事は適当に並べただけって事だろ?」
 
今から20年程前の話だが、まだインターネットが普及する前の”パソコン通信”のソフトで「自動作曲ソフト」ってのが有った。
今で言うAIとかを使っている訳ではないが、ある程度の指示を出せば、フレーズとコードを自動生成してくれるソフトだ。
オレはそのソフトで実験的に作曲を試みた。
フルスケールの作曲も出来たソフトだが、構成の指示がかなり面倒なので、8〜16小節程度の短いフレーズとコードを生成するように指示し、同じキーとテンポで瞬時に300近いフレーズを生成させた。
それを何回か繰り返し、数千フレーズを生成したのだが「これだ!」と思えるようなフレーズは残念ながら一つもなかった。
数千ものフレーズの中に本当に一つも無いのだ。
 
これが何を意味するか?
マシン(PC)には心がない。
その代わり、ロジック化された基本的な音楽理論と全てのコードが内包されており、オレなんかより余程多くの理論とコードとフレーズを内包してる。
しかし出来上がったフレーズは響かないのだ。
考えてみたら当たり前だ。
PC自体に心が無いので、PC自身が響くことは絶対にない。
PC自身が響いてないのに、聞く人間が響くわけがないのだ。
 
この発見が、当時若者だったオレの中では大きなショックだった。
音楽理論さえ理解して、多くの音を知っていれば作曲は自動的に出来る!と思っていたが、実際に一番必要なのは音楽理論でもコードの数でもなかった事が証明された瞬間だった。
 
お陰で、オレは先出の彼と同じ壁を乗り越えることが出来た。
ディミニッシュコードを覚える前に、それを使える心を作ろうって思ったのだ。
心が要求した音を出すギタリストになろうと思ったわけだ。
其のためには、もっと沢山遊んで世の中を知って、色んな出来事に遭遇して、其の経験を音に変換できるような心を育てようと思ったのだ。
其の音を出すために必要なら、コードも覚えるだろうし、難しい運指も練習するだろう。
 
結局ね、コードや運指ありきじゃないんだ。
まずは心なんだよね…。

■プロフィール
2005年:HMバンド「MARVERICK」にてCDデビューし、香港・ドイツ等の海外興行を成功させる。その後、地元札幌にて来札するの国内外の著名アーティストのOAやサポート・共演をこなし、ジャンルやスタイルに拘らない自由な活動を行う。 
2006年:女性ボーカルのPOPバンド「鈴音」の活動を通して、SHINJIと知り合う。 
2008年:ベースのSHINJIと共に「Phantom of sorrow」を結成。